子供といっしょによみたい詩   小林信次・水内喜久雄 編著
 10年近く前に本屋さんで見かけ、立ち読みしていいなと思い買った本。
部屋の片づけをしていて、懐かしく引っ張り出して拾い読みしてみた。
  
     海を見にいく
               菊池 正

 どうにも納得できないしかられかたをした時
 なんど考えても間違っていないのに
 それが正しいと認めてもらえない時
 僕は海を見にいくんだ

 まるでケシ粒のような
 沖合いをいく船影だけを見つめて
 ただ一心になぎさを歩いていく
 すると僕の後から
 小さいけれど確かな足跡がまっすぐに現れてくる――
 今はだれも知ってくれなくとも
 人間のしたことの跡はちゃんとしるされていて
 いつかきっとわかるとうなずけるんだ

 僕は
 美しく生きている人の不幸せな話を聞いたり
 世界に今日も
 ひもじさや争いが続いているニュースを知ると
 息が切れるくらいがむしゃらに走って
 海を見にいくんだ
 砂の上に座ると
 いつもひっきりなしに風が吹いているから
 白く高い波頭が倒れ込んでくるから
 世の中には
 僕が役に立つ何かがあるはずだと思えてくる

 海を見にいく――
 そこで大きく深呼吸をし
 そこで自分を信ずる強さを取り戻し
 僕はいっぱいに声を張り上げて叫ぶと
 帰ってくるんだ

この 「子供といっしょによみたい詩」 の中の詩は学校の教室で、印刷をして子供達に渡したり、教室に掲示したりして、読み合い共感を得た詩だそうです。
この詩によって助けられたり、自分の心のあり様を考えさせられたりした子供がたくさんいたことでしょう。
海に向かって心のうちを叫びたいことって誰にでもあるでしょう。
by nhana19 | 2005-12-09 17:49 | 読書
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